ブログ トドの昼寝

札幌爺のたわごと

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

桐野夏生:村野ミロの誕生

『ローズガーデン』、講談社、2000年6月、第一刷 p.22 皮を被って、心は百八十度違う奴。そう思って眺めたら、ミロは悪くなかった。まだ幼い顔付なのに目が据わっていてアンバランスだ。そのアンバランスな気配が気になって仕方がない。何かありそうだ。俺…

桐野夏生の震災表現 その3

『バラカ』集英社、2016年2月発行 pp.246-247 「大震災」、水獄 「俺、夕方までここに居させてもらうかもしれない。光ちゃん、見ててやろうか」 一瞬、迷った。テレビ局にバラカを連れて行くのは無理そうではあった。予想通り、未曾有の被害が出ている。朝…

桐野夏生の震災表現 その2

『バラカ』集英社、2016年2月発行 pp.232-234 「大震災」、水獄 買い物に行くためにせっかく休みを取ったのに、ぐずぐずしていると夕方になってしまう。優子は急いで着替え、バラカを連れてマンションの部屋を出た。七階でエレベーターを待つ。上から降りて…

桐野夏生の震災表現 その1

『バラカ』集英社、2016年2月発行 pp.217-221 「大震災」水獄 洗面所に向かった時だった。いきなり足を掬われるように大きく床が揺れて、何ごとかと驚いた。地震だと認識するまで、何が何だかわからず、ただ怯えて洗面台に摑まって蹲っていた。 揺れは収まる…