新千歳空港脱出作戦
2026年1月25日(日)、昼過ぎに長男とその小樽以来の同級生二人の四人で昼飯を食った。一人が帰り、代わりに孫が合流し、札幌へ帰る私を羽田まで見送ってくれることになった。スマホで航空会社からのメールをチェックすると、札幌圏での大雪による交通障害の恐れがあるので翌日の便に振り替えを勧める文言があった。息子たちが情報チェックすると、札幌が記録的な大雪で交通に混乱が生じていることが分かった。カミさんにSNSで連絡をとると、「今はJR止まっているけど、午後5時ころから動き出すらしい。バスは全滅」と返事が来た。8時半新千歳空港着だから大丈夫だろうと踏んで保安検査場を通って待合室に進む。いかにもいつも通りの搭乗待ちの光景があった。不安げな顔などひとつもなかった。
ほぼ満席の状態で機内はごった返しており、後部座席の窓から外をのぞくと荷物の積み込みがえんえんと続いていて、便は10分遅れの離陸となった。その後順調に飛行し定刻より10分遅れで到着した。札幌方面への交通情報のアナウンスはなく、淡々と皆降りて行った。預けた荷物がないので、喫煙ルームで煙草にようやくありついた人たちを眺めながら出口をでると、なにかおかしい。とりあえずトイレに行ってからJRへのエスカレーターに向かおうとすると人々が大勢滞留している、その静かな様子がおかしいと感じさせたようだ。長い行列が何重にも折りたたまれて出口前の空間を埋め尽くしている。バスはどうかと見ると「雪のため運行中止」という張り紙が。JRのアナウンスはない。列の最後尾を探してとりあえず並ぶ。時間は容赦なく過ぎて10時半頃だったろうか、少し列がエスカレーターに吸い込まれるようにして動いたが、それからはピタリと止まってしまった。スマホで情報を集めてみたが、はっきりしない。カミさんに連絡してみるとエアポートが何便か動くようだという返事だ。やがて録音したようなアナウンスが流れてきた「本日は1階,2階、4階のフロア―を開放いたします」これが間をおいて繰り返されたが、毛布や敷マットの用意があるなどとの補足はない。JRからはうんともすんともない。業を煮やした人がエスカレーターの入口に立つ警備員と交渉して駅まで状況確認に行ったらしく、戻ってきて言うことには「今日はもちろん、明日8時頃まで列車は一本もないんだって。並んでいる意味ないから休憩とりに上に行く」と列を離れて行った。私も後に続いたことは言うまでもない。
11時を過ぎていた。4階に上がってみた。温泉施設と映画館があるがもちろん閉まっている。フローリングがカーペット風なので足の踏み場もないほど大勢の人が寝転んでいた。諦めて二階に降りてお土産物売り場のはずれのテーブルとチェアーに余裕があったので椅子をひとつ壁際に移動させて座ってうとうとすることにした。騒ぐ人はいないのだが、中には酒盛りを始めて盛り上がって声が大きくなり、挙句の果てには大いびきをかいてそのまま硬い床に寝そべるグループがいて眠りを妨げる。一番可哀そうなのはむずかる赤ん坊を抱えてあやすように歩き回るお母さんたちだ。2時過ぎにはもう眠気も覚めて、ぼんやりとスマホでいろんなメディアにアクセスしてみるが大した進展はない。日記をつけることにして浮かんだ駄作がこれだ。
空飛べど道行き難し冬の旅 空港に雪隠詰めや雪嵐
すると、一人おいた隣の年配の女性二人が札幌への移動についてあれこれ話込んでいるのが耳に入った。「10時過ぎまで電車はないみたい、動き出してもどうなるやら、、、」そこで、新札幌までならタクシーは15,000~7000円とチェックした私は「どうです4人で乗れば一人4千円前後みたいです一緒に行きませんか」と声を掛けた、間に居た男性も誘ったのだが「僕は札幌ですから」と動こうとしない。地下鉄利用を説明しても首を振るだけだ。隣の若い女性も誘うと「いいですよ。」善は急げと荷物を抱えて4人で1階へ。タクシー乗り場に出てみると一台もいないし風が吹きすさび温度計は-18℃を指している。互いに顔を見合わせていると、空港職員で完全防寒装備で身を固めた男性が「タクシー待ちは2階の大ロビーですよ」と案内してくれた。それもそうだと納得しながら2階中央の広場に向かうと二つの大きな人の塊ができていた。いずれもタクシー待ちの行列でベルトパーテーションで仕切ってそれぞれ200人以上並んでいる。並んだはいいが捗はいかない。待つ間いろんな話をしたが「旦那が一人で家にいるのだけど、迎えに来れるかと聞いたのよ。」「家を出た瞬間だめだと分かった」とにべもない返事だったそうだ。その後の情報では札幌市内ほぼ全域で車を掘り出したところで表に出るのもままならない状態に陥っていたようだ。5時になると人が動き始め、中央ロビーの大壁面を占めるスクリーンも点灯した。ようやくニュースが見れるようになった。JRは10時まで動かないとも告げている。音声はない。搭乗手続きの窓口が開いた。飛行機が飛ぶなら空港になんとか来ようとするだろう、タクシーを使う人もかなりいるはずだ。タクシー待ちの列も動き始めるのではないかと期待したが、「苫小牧方面行きの方はいますか?」「室蘭行きの方はいませんか?」と南から来て南に帰るタクシーばかりだ。札幌からのタクシーはほとんど無い。道路情報を確認してみると、札幌南IC以南が開いていた。それ以北は閉鎖が続いている。すると一緒している若い女性が「父がなんとか迎えに来ると言ってます」と口を開いた。ただ麻生方面からで札幌市内を抜けて札幌南インターまで来なくてはならず、どのくらい時間がかかるかは分からないとのこと。6時になると売店が開き始めた。空港の上級職員とおぼしき数人がそれぞれチームを率いてロビーを横切って行く。タクシー待ちの列も僅かばかりだが動き始めた。2階は出発ロビーがあるがそこにも出発する乗客たちが集まり始めている。札幌から自家用車や小型バスなどでなんとかたどり着いたようだ。だがJRについては、ニュース画面が動き出すのは10時過ぎになるだろうと告げるだけだ。空港からのアナウンスもない。
交替で用を済ませることになって、私は急に空腹感を覚え弁当屋を覗いたが、昨日の売れ残りばかりで酢のきいた押し寿司を求めお茶で流し込むようにして食べた。列に戻ると、一緒の年配の女性が空港職員と話していたが、こちらを振り向いて「今から空港駅から二編成列車が出るので、行ってみてはどうかと言うのだけど、どうしよう?」私が確実に乗れるかどうか訊くと、今ならほぼ大丈夫ですよとのことで、それを聞いた我々は動くことにした。若い女性は父の迎えを待つというので、場所を変えることにして別方向に。香港から来たという夫婦に一緒に行こうと誘ったが大きな荷物を指さして首を横に振る。大柄の旅好きの女性はキャリーケースを抱えるようにして走りだした。もう一人の女性と私は彼女の後を追うようにエスカレーターに向かった。8時ちょうど空港駅に着く。なんのことはない昨夜動き出せずにいたエアーポートを「空港利用客救出臨時便」と銘打って、なんとか除雪した札幌方向のレールを使って動かすことにしたのだ。すでに一編成は出発していたが、我々はばらばらに余裕をもって座ることができた。満員になるまで待って8時20分新千歳空港駅を出た。途中「急ブレーキをかけます。なにかにつかまってください!」というアナウンスと同時にギギギーという制動音とともに急停車した。なんと踏切の非常停止ボタンが押されたようで、運転士が安全を確認し再出発した。「クマが押したんでないかい」という誰かの軽口に皆気分がなごんだ。新札幌が近くなったころに電車の屋根になにかぶつかるような音がし始めた。不安がじわりと広がるのが感じられ、新札幌に着くやかなりの乗客が私も含めて降りた。そして、地下鉄はまるで何事も起きてないかのように通常通りの運行だった。
25夏の句会 その1
夏の句会にはなんと高校三年生でフランスに交換留学してきた女子が参加してくれました。しかもその体験を見事に詠ってくれました。
Koharu

1)サンマロのムールと夕日に鎮められ
À Saint-Malo
Les moules et l’orange du couchant
Ont calmé mon cœur tremblant.

2)リヨンでは プラリネタルトで 甘い恋
À Lyon
Dans une tarte pralinée
J’ai goûté l’amour sucré.

3)パリの朝 月のかけらの クロワッサン
À Paris
Sur le balcon, j’ai croqué des croissants
Éclats de lune au petit matin.
2025 冬のフラ語句会
2024年の年末は意外と暖かった。雪もあまり降らず拍子抜けしたが、結局は平年並みの積雪とはなった。それでは編者の選択で8句。
谷 花丸
置き配の元祖はサンタ夜は更けて
L'inventeur de la livraison à domicile
C’est le Père Noël
La veille de Noël s’avance
ごひいきのお天気姉さん着ぶくれて
La commentatrice de la météo
C’est ma chouchoute récente
Elle se couvre bien de vêtement chaud ce matin

Yoshi-yoshi
雪冠る菊を救ひて仏花とす
Les chrysanthèmes enneigés
Je les ai sauvés et
Déposés sur l’autel
川凍る待ってましたと獣跡
La rivière a gelé
« On l’attendait !» disent-les bêtes
Des marques de leurs pattes

美口
還暦に仰ぎ見る冬銀河
Mon soixantième anniversaire
Je regarde en haut
La voie lactée d’hiver
ひと吹きで根性尽きる冬の蝿
Mouche d’hiver
Est à bout de ressort
D’une seule bombe de souffle


O.E
白雪の下なる氷足すくう
Sous la neige fraîche
Des glaces dures me font
Un croc-en-jambe
薄着する去年の雪や今いずこ
On s’habille légèrement
Où sont les neiges
D’antan ?
24夏のフランス語句会
Hana
白き足浸すせせらぎ夏帽子
Portant un chapeau d’été
Elle baigne ses pieds blancs
Dans un ruisseau
海猫(ゴメ)残る波のまにまに鉄路消ゆ
Une voie ferrée supprimée
S’est engloutie dans les flots
Des mouettes restent encor

襁褓(むつき)換え腓(こむら)膕(ひかがみ)新樹なり
Le changement des couches
Les mollets et les jambes d’enfant
Jeunes arbres
喃語てふ幸せありて若葉風
Le babillage
C’est un plaisir
Le vent souffle sur les jeunes feuilles


Migu
薔薇散りて地に背徳の赤栄え
Des roses sont tombées
Le rouge immoral est prospère
Sur la terre
先生慈しみ深く夏霞
Dans la brume d’été
Mon maître dort doucement
homme de tendresse
Egu

旱天に不動の雲や旅の友
Au ciel de canicule
Il y a un nuage immobile
qui m’accompagne
湖西燃ゆ夏の日の出ぞ雲の峰
Le côté d’ouest du lac de Biwa
S’enflamme au soleil levant estival
Des cumulonimbus
2024年冬のフランス語句会
北海道もすでに春を迎えました。凍える北風に句会終了とともに家路を急いだのも懐かしく思われます。遅ればせながらここに数篇選んでご紹介します。
H. T.
ボーナスの記載無き通帳見詰む
Je fixe mes yeux
Sur mon livret de banque
Sans inscription de bonus
初日記なかなか書けぬ夜の続く
La page blanche continue
Dans mon premier journal de l’an
Pendant quelques nuits
雪原の朝を切り裂く一両車
Le train d’une voiture
Fend le matin
Du champ de neige
こんな光景もやがて消えるのでしょう。JR北海道根室線富良野ー新得間が先日廃線になりました。「一両車」というのはフランス語でぴったりの表現があるのでしょうか?
Y. M.
露天風呂のぼせて待つ初日の出
Dans le bain en plein air
J’attends le premier lever du soleil de l’année
En ayant la tête qui tourne
歌合戦初耳ばかりの大晦日
La bataille de chansons
Ce ne sont que des débutants
Saint-Sylvestre
O. E.
車音消し雪降り積みて降り積みて
Plus de bruits des autos
La neige tombe fort en s’amoncelant partout
Toujours plus fort
広島に雪降りたるも傷消えず
À Hiroshima
Il neige pour ne pas réussir à
Couvrir des blessures
参加予定だった Y. Y. さんは大雪にはばまれて急きょ欠席となられましたが、投句されていたので、参加した3人でそれらを検討しました。日本語の同音異義語遊び(ご本人は<二重含意の戯れ L’Amusement à double sens>と定義)をフランス語で伝える方法を探していらっしやるのですが、これはなかなか難しい課題です。一句全員で感心したものがありましたので掲載しておきます。
孫の手や生死(しやうじ)離るる心地して
Les mains des petits-enfants
[OU Le gratte-dos]
En transcendant la vie et la mort
Je me sens bien
あるいは
Les mains des petits-enfants [OU Le gratte-dos] sur mon dos
En transcendant la vie et la mort
Je me sens bien

拙い絵で申し訳ありません。孫の手(何人かの複数の手)がお祖父さんの背中に触れたり叩いたりするときの至福と一人で「孫の手」で背中を掻くときの快感がないまぜになった句ですね。









