NHKニュースで取り上げられていて驚いたのだが、「脱コルセット」が今SNS上で大きな盛り上がりを見せているという。これは私が20年来某女子大の講義で必ず取り上げてきたアイテムだ。だが話を聞いていてもポール・ポワレもココ・シャネルも出てこない(私の不注意かも知れない)。19-20世紀の転換期、ベル・エポックの真っ只中で、女性のプロポーションの理想とされていた「S字カーブ」を可能にする器具が「コルセット」であった。侍女や召使が思い切りコルセットの紐を締め上げるシーンはカリカチュアとして常套化していた。ポワレは「女性の身体の自然なシルエットはそれだけで美しい」としてコルセットを廃したドレスを次々と発表していった。一方、シャネルはシルエットよりもむしろ「動きやすさ」を追及した結果「脱コルセット」デザインに到達した。特に第一次世界大戦で国家総動員体制に突入した各国、とりわけアメリカでは女性の職場進出が著しくこの流れは大きなものとなった。
そして日本では一世紀遅れて、この言葉が主観的なものも含めて「ジェンダー圧力」からの自己解放として使われることになった。日本でのジェンダー偏向は著しいものがあるが、同調圧力の強さもあって、無意識的に「女らしさ」を受け入れていることは論を待たないだろう。LGBTが話題となりながらも、ほとんど「らしさ」の受け入れを自然なものとして広告でダダ洩れ状態で使い続けている。東洋のガラパゴス面目躍如はもういいのではないか。周回遅れでもともかく走るべきだ。