ブログ トドの昼寝

札幌爺のたわごと

『にっぽん三銃士』、気になる「討匪行」

講談社五木寛之小説全集全巻読破に挑戦中。昔のスピードはもうないので、のんびり行くしかない。現在『にっぽん三銃士』(第十五、十六巻)も終わりにかかってきた。スラップスティック小説だが、小林信彦筒井康隆への対抗意識はあっただろうか?終わり方に幻滅したという感想が多かったそうだが、振り出しに戻るという手法は頷けるし、帰還は新たなスパイラルを予感させるし、出発点も元のものではあり得ないだろう。

一郎は友人のH.T.や松田優作を彷彿とさせるし、読者は登場人物のそれぞれに自分の周囲の誰かを当てはめながら読み進めるだろう。そしてなによりも時代の空気が背景描写や歌にのせて見事に立ち上がってくる。当時読んだときも、哄笑を押さえながら頁をめくったが、距離を置いてもこみ上げる笑いは新鮮だ。

 

一つ気にかかったことがあるので記しておく。

下巻(第16巻)の79~80頁にかけて、戦中派の主人公の一人、黒田が歌う「討匪行」(八木沼丈夫作詩、藤原義江作曲)についてだ、私の数多い叔父たちの内にはシベリア抑留者だった人や満州で負傷した人そして戦死した方もいる。親族が本家に集まると酒盛りになり、やがて軍歌になったりするのだが、息子を失った祖母を気遣ってか、あまり放歌高唱とはならない。シベリア抑留を被った叔父が呟くように歌ったのがこの「討匪行」だったことを思いだした。

そして加藤登紀子もこれを歌っていたことを思いだして、ネットで調べてみると、1971年発売(ポリドール)の『日本哀歌集/知床旅情』が出てきた。買ってはいないが、記憶にはある。コロナの見舞金?で入手しようかとネットショップに入ってみると、再版が売りに出ていて、視聴リストもあった。だが「討匪行」はない!再版にあたって外したのだろうが、お登紀さんの個人的判断なのかどうか知りたいところではある。渥美清の歌ったのがあるので参考までに。

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