ブログ トドの昼寝

札幌爺のたわごと

石川啄木に関する難問ついに解決

1939年3月発行の Anthologie des poètes japonais contemporains の原詩探索で最後まで残っていた啄木の Pensées vagues et solitaires, pp.106-107 について、昨日藤女子大図書館から借り出した昭和28年の岩波版全集をめくっていてようやく元になるものを発見するとと同時に、訳詩の大きなミスを発見した。仏訳は Pensées vagues et solitaires のタイトルで一ページ半も続く長いものになっているのだが、発見した原詩は「幽思」で実は仏訳の106頁の末尾まででしかない。残りの107頁はまったく別の詩であった。それは「無題」(岩波版全集第三巻 pp.154-155)である。これで Concordance はほぼ完成、しかし初出の確定などまだまだ道半ばだ。まあ退職後のお楽しみとしよう。

    幽思
 ほのかにも揺らげる火あり。

 ほのかにも今我が心、
 はるかなる人無き島の
 洞内の光明を忍ぶ。

 ほのかにも揺らげる火あり。

 ほのかにも今我が心、
 春の夜遠方人の
 涙にし濡れたる思ひ。

 我が思ひ、幽かに顫ふ。

    (明治41年3月17日「釧路新聞」)