ブログ トドの昼寝

札幌爺のたわごと

コロナ禍最悪予想

文藝春秋5月号

 

神谷秀樹

 そもそもなぜ企業や人々は借金しまくったのか。

 それはリーマン・ショック後、米国の連邦準備銀行FRB)、日銀はじめ世界の中央銀行がこぞって「バブル崩壊からの回復は次のバブルの形成で」という誤った金融政策を採用したからだ。

 公定歩合政策金利)をとことん下げ、市場に資金がありあまっているのに、量的緩和策で市場に出回る株や債権をむやみに買い上げ、さらに市場にお金を溢れさせた。

(中略)

 企業は借金を膨らませて、買収と自社株買い戻しに使った。そのおかげで実体経済が二%程度しか成長しないのに株価は二〇%以上も上がった。この数字の差がバブルそのものだと理解していい。

(中略)

 企業も個人も「借金麻薬」の患者だったのだ。企業や個人が金利をほとんど払わずにお金を借り、麻薬漬けとなっていたところにコロナ感染問題が起き、危機的状況に陥った、というのが世界経済の現状だ。

(中略)

 日本の状況も同じだ。すでにゼロ金利の日銀は金利で打つ手がない。黒田東彦総裁は、ETF(上場投資信託)の購入を倍増させる決断を下し、一九日には、一日あたりで過去最大の二千億強買い込んだ。だが、同じ日付のファイナンシャル・タイムス紙は一面で、「中央銀行介入への信頼が切れ、恐怖が市場を支配した」と報じた。

 安倍政権はオリンピック延期もあり、金融政策の効力に限度が見えることから、さらに財政支出を拡大するというが、日本の財政赤字はそもそも世界で突出して大きく、需要喚起策が従来どおりの公共事業なら、物理的に人も物も動けない感染拡大がつづく状況の中で実行すら危ぶまれる。

(中略)

インターネット・バブルの崩壊、リーマン・ショックも同様であくまで金融バブルの崩壊だった。

 今回のコロナショックはそれとは性質が全く異なる複合的な社会・経済危機ではるかに深刻だ。