ブログ トドの昼寝

札幌爺のたわごと

『土の記』読了

高村薫『土の記』3週間かけ読了。一気にとは行けなかったのだが、まあ彼女のエクリチュールというのはミステリーものでも結構緻密ですっ飛ばせないところがある。この作品(作品としかいまのところ呼び様がないのでは?)は日本語の実験として見ることもできるような気がする。叙景に依存することなく精密に登場人物の心象をなぞるようにして、心象自体がまさに環界のなかに溶融していく瞬間を見事に描いている。「土に生きる」とはそういうことなのだろうか。「失われていく」日本の風土などと言ってはいけないのだ。天候に振り回されながら、なんとか折り合いをつけながら、「土」と暮らす人間が確実に生き続けているのだ。だがそうした人たちがいなくなったとき何が起こるのだろう?地層に、ある日農耕が途絶えた印が残るのだろうか、誰かそれを見てくれることはあるのだろうか、、、