ブログ トドの昼寝

札幌爺のたわごと

古川日出男を読む

『ベルカ、吠えないのか』、『中国行きのスローボート』と惹かれた順に読了。『ベルカ』はこれまでの犬に対するヒューマニズムを超えようとする斬新なchiennisme?で20世紀を総括する面白さがある。ユマンとシアンの繋がりを描こうとするとどうしても言葉にならざるを得ないという問題をどのようにクリアしようとしているのか、そしてできているかとなると疑問符が付くだろう。しかしエンターテイメントとしては快作だ。
『中国行きのスローボート』、もちろん村上春樹のそれのリミックスである。すでに「間テクスト性」とかと言って、われわれの業界でも取り上げられてきた「オリジナル絶対」に対する脱構築から見ると当然ありうるものなのだが、まさにリミックスの凄さというか、さまざまなエクリチュールを挿入することにより、村上春樹とは違うものとして「どうしようもなく繰り返す、絶望的な脱出の試み」の壮絶さが出ている。