ブログ トドの昼寝

札幌爺のたわごと

畏友今西一、逝っていた。

 畏友今西一が逝った。去年私の姉の亡くなったことを伝えたときにメールで「70過ぎですぐに死ぬのは可哀そうやな」と慰めてくれてから一年も経たずに逝ってしまった。急性心筋梗塞で自分から病院に電話して入院したがそのまま死亡したということだ。1月6日の夜のことだったという。学年では二年先輩にあたるが、知り合ったのは彼が44才でようやく常勤職を得て小樽商大に赴任してきたときからである。研究室への引っ越しはなんとJRコンテナ3個分。他にも官舎(当時はまだ我々は文部教官であった)にコンテナ2個分あったという。研究室にしろ自宅にしろ、当人の居場所にたどり着くまでに本棚の迷路を声をたよりにくぐり抜ければならなかった。日本近世・近代史研究ではすでに名をなしていたようだが、小樽での学的生産性の高さには目を見張るものがあった。専門分野だけでなく、先端思想の問題領域にも人並外れた読書量で鋭く切り込んでいた。とにかく始まったら話が止まらないのである。歴史という学問の厳しさをまざまざと見せてくれた先達でもあった。
 彼のもう一つの思い出に残るせりふがある。「常勤になれてようやく本屋への借金の重しが軽くなった。本を落ち着いて書ける、どんどんやるぞ」とほっとした口吻で言っていた。つまり伝説の引っ越し荷物はそのかなりの部分が本屋への借金の塊であったということだ。知り合いにビブリオフィルはたくさんいるが、借金の山を背負いながらというと今西一が筆頭か?でも京都(関西)もよく面倒を見てくれたというべきだろうか。学者を見る目が肥えていると言ったほうが良いかもしれない。
 どうか、あの世とやらでも読書三昧をお続けください。合掌。

今西一とニセコにハイキングに行った折に神仙沼で撮ったもの