ブログ トドの昼寝

札幌爺のたわごと

『暁の宇品』大佛次郎賞受賞!

 堀川惠子の『暁の宇品』が大佛次郎賞に決まった。「暁の」でピンとくる人はそう多くないはずだ。私がこの言葉を耳にしたのは札幌である。ベーコン研究で著名だった花田圭介先生とのサロン・デ・フローラ(無名哲学者俱楽部)でのよもやま話であったと記憶する。「君も広島生まれなら宇品は知ってるだろう。私はそこの暁部隊にいてね、原爆に遭ったんだよ。」暁部隊が陸軍の海上輸送部隊で海軍の呉と並び立っていた(はずだった)んだとも聞かされたが、戦争末期瀬戸内海は機雷の海で、大発やボロ船で朝鮮半島との間を行き来したのだそうだ。運良く生き延びながらも8月6日を比治山下の兵舎で迎えた。先日亡くなられた坪井直さんが写真にうつった御幸橋とはそう離れてはいない。私が高校三年間市電で毎日のように渡った橋である。さらに堀川さんは丸山眞男暁部隊にいて海外情報の収集に携わっていたことを改めて解明してくれている。広島の原爆投下に関する必読書でもある。私が直接、間接に大きな影響を受けた人たちが広島に足跡を残していたことに改めて感慨を禁じえない。

 

追記:花田圭介先生の原爆被爆体験は下記の本に収録されている、

安田常雄/天野正子編『戦後体験の発掘ー15人が語る占領下の青春』、1991年、東京、三省堂